ヘリコバクター・ピロリ菌とは
胃がんとの関連性がメディアでたびたび取り上げられているピロリ菌は、ヘリコバクター・ピロリ菌が正式名称で、強い酸性の胃の中でも生きていける細菌です。ピロリ菌は胃十二指腸潰瘍の原因になるだけでなく、ほかにも多くの疾患に関与していることが指摘されています。胃過形成ポリープ、萎縮性胃炎、鳥肌状胃炎、悪性リンパ腫の前段階である胃MALTリンパ腫、胃がんといった胃に関する疾患だけでなく、特発性血小板減少性紫斑病、鉄欠乏性貧血、免疫疾患、皮膚疾患などへの関与についても報告されています。
昔、日本のピロリ菌感染率はとても高かったのですが、衛生状態の改善によって年々減少傾向にあります。ただし、ピロリ菌は環境による感染だけではなく母子感染といった家族間で感染するケースがあります。そのため、胃十二指腸潰瘍や胃がんの方を両親に持っている場合、高い確率で菌を持っている可能性があり、ほとんどは幼児期の感染だとみられています。逆に言えば、子どもを持つ前の若いうちに除菌治療を受けておけば、次世代へのピロリ菌感染を防ぐことができるのです。
なお、日本におけるピロリ菌感染率が今もまだ高いことを受けて、平成25年2月に慢性胃炎の方のピロリ菌検査、除菌治療に保険が適用されるようになっています。
ピロリ菌の検査方法
1尿素呼気チェック
主に除菌治療の際に、治療が成功したかを判定する際に行います。当クリニックでは結果の精度を上げるために、治療終了して2カ月後にこの検査を行っています。
検査は約20分で終了しますが、事前に朝食抜きで来院していただき行っています。結果は1週間後となります。
2迅速ウレアーゼ法
胃カメラ検査時に胃組織を採取して、ピロリ菌感染を検査します。
3抗体法・抗原法
スクリーニングとして行う安価な検査です。血液抗体測定、尿中抗体測定、便中抗原測定によって検査します。
4培養法
胃カメラ検査時に胃組織を採取して、ピロリ菌感染を検査します。迅速ウレアーゼ法と違い、培養して菌の薬剤感受性検査を行います。
5鏡検法
胃カメラ検査時に胃組織を採取して、ピロリ菌感染を検査します。胃組織の検体を染色した上で、顕微鏡で感染の有無を確認します。
ヘリコバクター・ピロリ菌専門外来
当クリニックでは、消化器内科専門医がヘリコバクター・ピロリ菌専門外来の診療にあたり、胃カメラ検査によるピロリ菌の感染検査と除菌治療を行っています。
なお、ピロリ菌の除菌治療で使われるのは、クラリスロマイシン(クラリス)、サワシリン(ペニシリン系抗生剤)です。除菌治療を受けた際に、じんましんや湿疹が出て除菌治療を中止した場合は、薬剤アレルギーの可能性が高いため、こうした通常の除菌治療ができません。
そして、除菌治療は少ない確率ですが、1回目で失敗することがあります。ただし、2回目の除菌治療を受けた場合、ほとんどの方が成功します。除菌治療の成功率は1回目が約70~80%で、1回目と2回目までを合わせた成功率が97~98%です。ごくまれに3回以上治療を繰り返してやっと除菌に成功する場合もあります。1回目の除菌が失敗してしまっても、2回目の除菌治療は保健診療です。ただし3回目以降は自費治療になります。
平成25年2月より保健診療の対象となる方が増えており、現在は胃カメラ検査で慢性胃炎の診断を受けた方も、ピロリ菌の感染検査が健康保険適用になっています。また、この検査でピロリ菌感染が認められた場合、保険診療で除菌治療を受けることが可能です。
他施設で人間ドックなどの胃カメラ検査を受け、慢性胃炎の診断を受けた場合も、6か月以内という条件がありますが、保険診療でピロリ菌検査を受けることができ、感染がわかったら保険診療で除菌治療を受けられます。こうした細かい条件がありますので、お気軽にお問い合わせください。
自費診療の対象になるケース
- 2回目の除菌治療が失敗し、3回目以降の除菌治療を希望する場合
- 健康診断などでピロリ菌感染が指摘され、胃カメラ検査を受けたくない場合
ピロリ菌に感染している場合、症状がなくてもすでに胃がんが発生している可能性があります。そのため、ごく初期の胃がんも発見可能な唯一の検査である胃カメラ検査を受けることをおすすめしています。
除菌治療の流れと注意点
Step1除菌治療
2種類の抗生剤、PPI(胃潰瘍治療剤)を1週間服用します。副作用として可能性があるのは、下痢(約13%)、味覚異常(約30%)、肝機能障害(約3%)、じんましん(約5%)などです。
Step2効果判定
除菌治療後2カ月目に尿素呼気テストを行います。
これで除菌治療が成功したかどうかを判定します。
Step31度目の除菌治療が失敗した方の2回目の除菌治療
抗生剤を1種類、クラリスからメトロニダゾールに変更し、1週間内服します。
Step4効果判定
2除菌治療終了後の2カ月目に尿素呼気テストによる確認検査を行います
ほとんどの場合、ここで除菌は成功しますが、万が一失敗した場合は、3回目、4回目の除菌治療が可能です。ただし、3回目からは健康保険が適用されないため自費診療になります。